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前回は、寝る前のスマホについて書きました(寝る前のスマホ「ブルーライト」より「コンテンツ」を気にする理由)。私の結論としては「画面の光の影響よりも、見ているコンテンツの影響を気にするほうがいい」です。
では、寝る前の光は、なにを気にすればいいのでしょうか。
この問いに、はっきり答えている人がいます。前回も登場した柳沢正史教授です。インタビュー記事の中で、夜のスマホのブルーライトより「天井の白っぽい明るい光の方が(健康な睡眠には)有害なのです」と話しています(サイエンスポータル、2025年5月27日)。
気にするのは、頭上の明かりです。この記事では、睡眠講座のテキストの数字を確かめたうえで、私の部屋の天井の明かりを照度計で測ってみた結果を紹介します。
この結果で得た私の考えを先に書くと、「寝る前の光を見直すなら、手元のスマホの画面だけでなく、部屋全体を照らす天井の明かりの明るさと色も見直す必要がある」です。
夜の光は、どのくらいの明るさから眠りに影響するのか
寝る前の時間帯、とくに寝る2〜3時間前に光を浴びると、眠くなる時刻が遅くなりやすくなります。メラトニン(夜になると脳から出て、体を眠りに向かわせるホルモン)の分泌も、抑えられやすくなる。睡眠講座のテキスト(『健康・医療・福祉のための睡眠検定ハンドブック up to date』、以下「ハンドブック」)には、そう書かれています(p.77、p.81)。
つまり、夜に明るい光を浴びると、眠りに向かわせるメラトニンが減って、眠気が来にくくなる。体内時計も後ろにずれて、寝る時刻も起きる時刻も遅くなりがちになる。私は、そう理解しました。
では、どのくらいの明るさから、眠りに影響するのでしょうか。ハンドブックの数字を並べてみます。
- 夜の光が200ルクスほどより明るいと、メラトニンの分泌が抑えられはじめるとされている。その境目は、光の色や、浴びている時間で変わる(p.76)
- 同じ200ルクスでも、色温度(光の色合いを表す数字)が3,900ケルビン以上の白っぽい光では、メラトニンの分泌が抑えられた、という報告がある(p.94)
- 夜の家庭の照明は、目に入ってくる光で100〜200ルクスほど(p.75)
- スマートフォンの画面の光は、目の位置で10ルクスほど(p.78)
数字だけを見ると、スマホの画面より部屋の照明のほうが、桁がひとつ大きいのです。柳沢教授が天井の明かりを挙げた理由も、ここにあるのではないでしょうか。
ただし、ルクスは人の目に見える明るさの単位で、青い光の働きの強さをそのまま表す数字ではありません。これはハンドブックではなく、私の補足です。ハンドブックにも、「だからスマホの光は気にしなくていい」とは書かれていません。前回書いたとおり、寝る前のスマホは控えるよう勧められています。
推奨は「少し暗く、色温度を低く」
では、寝る前の部屋の明かりは、どうすればいいのか。ハンドブックでは、寝る前の2〜3時間は、普段より明るさを少し下げ、青の成分が少ない、色温度の低い光にすることが勧められています(p.81)。
ポイントは2つあります。明るさと、色です。
明るさは、「真っ暗にする」ではなく「少し下げる」。色は、白っぽい光から、オレンジがかった光へ。家庭の照明でいえば、昼光色や昼白色より、電球色のほうが色温度は低くなります。
(見た目は赤みを帯びるほど温度が高い印象を受けますが、「色温度は低くなるほど赤みを帯びる」ようです)
明るさも色も、天井の照明器具の設定を変えれば、自分で調整できます。私自身は、LEDの白色光には青い成分が多いと知ってから、部屋の明かりを変えてきました。
私がやっていること。白色光から暖色光に替え、20時にタイマーで減光
照明は、白から暖色に替えました。といっても、いきなり暖色にしたわけではありません。夏場は暖色の光が暑っ苦しく感じた経験があったので、明るさと色を変えられる照明を用意し、最初は白い光で使いはじめました。
夏場の暑い季節をやりすごしてから暖色に替えると、その変化には普通に慣れました。翌年の夏も、夜は暖色のままで問題ありませんでした。いまとなっては、夜に落ち着く感じさえしています。
いま使っているのは、SwitchBotのシーリングライト(6畳用)です。スマホのアプリで、明るさと色を細かく変えられるタイプです。
このライトには、時刻を決めて明るさと色を切り替える機能があります。私が使っているのは「夜間モード」ひとつだけです。
帰宅して明かりを点けると、明るさはいつも最大照度の30%です。それを20時に10%まで減光するように設定しています。
色温度は夜のあいだずっと低くしておき、20時からは明るさも下げる。形の上では、ハンドブックの勧めと重なる設定です。20時という時刻は、樋口重和さん(九州大学大学院芸術工学研究院)の解説にある、次の記述を参考にしています。
習慣的に23時に就寝する人の場合、3時間前の20時以降に強い光を浴びると、概日リズム位相が後退する可能性があるので注意が必要である。
「概日リズム位相が後退する」とは、夜に眠くなる時刻が、だんだん遅くなっていくことを指します。普段私が寝るのは、23時ごろです。
照度計で、目に入る光を測ってみた
では、私の部屋は、ハンドブックの数字のどのあたりにいるのか。照度計で測ってみました。
測ったのは、天井の明かりそのものではなく、目に入ってくる光の明るさです。ハンドブックの「夜の家庭の照明は100〜200ルクスほど」も、目に入る光で示された値なので、それに合わせました。そこで、寝る前の時間を過ごす、ベッドわきの椅子に座り、目の高さに照度計を置き、ふだん目を向けているPCの方向に向けて測りました。
天井の明かりだけの数字は、次のとおりです(PCの画面は消して測定)。色は、20時の前も後も、設定できる範囲でいちばん暖色側にしています。
| 時刻 | 明かりの設定 | 目に入る光 |
| 20時より前 | 明るさ30% | 13ルクス |
| 20時以降 | 明るさ10% | 4ルクス |
20時の切り替えで、目に入る光は13ルクスから4ルクスへ、約3分の1に下がっていました。
この目安と比べると、20時より前の時点で、夜の家庭の照明(100〜200ルクス)の10分の1ほどです。メラトニンを抑えはじめるとされる200ルクスには、まったく届いていません。
ただ、200ルクスより暗ければ安心、とは言い切れないようです。先ほどの樋口さんの解説には、「平均で60lx程度の一般家庭の光でさえ、毎日繰り返されることで」夜に眠くなる時刻が約1時間遅くなっていた、という報告も紹介されています。私の部屋の13ルクスは、この60ルクスよりも、さらに低い値です。
数字で見ると、かなり低い。あえて照度計で実測してみて感じたのは、「もしかして、ここまで暗くしなくてもいいのでは?」という気持ちでした。
20時を過ぎると、いちばん明るいのは画面だった
測っていて、もうひとつ分かったことがありました。
PCの画面を点けたまま、同じ位置、同じ向きで測ると、20時以降は9ルクスでした。照度は、同じ場所に当たる光を足し合わせた値です。天井の明かりだけだと4ルクスなので、画面の光はおよそ5ルクス分だった計算です。
つまり、天井の明かりを落としたあとは、目に入る光のうち、天井の明かりより画面の光のほうが大きくなっていたということです。少なくとも、数字の上では、そうでした。
ここで、前回の結論とぶつかるように見えるかもしれません。前回は、画面の光よりコンテンツを気にするほうがいい、と書きました。ただ、ここで測ったのは目の前のPCの画面で、9ルクスという数字は、ハンドブックの目安の200ルクスから見れば、ずっと小さい値です。画面の光が「天井の明かりより強い」ことと、「睡眠に影響するほど強い」ことは、別の話だと私は考えています。
ちなみに、画面の光への対策は、私もひととおり試しました。
パソコンでは、ブルーライトカットの眼鏡で対策したことがあります。買ったのは、2010年ごろ。ところが、画面が見づらくなるうえに、効果も感じられません。1〜2年で、普通の眼鏡に買い替えました。
スマホでは、画面の色を暖色寄りにするナイトモードと、画面を暗くする設定の両方を試しました。どちらも、やはり見づらい。結局いまは、画面がギラギラにならない程度の明るさで使っています。
まとめ
この記事で確かめた事実は、次のとおりです。
- ハンドブックでは、寝る前の2〜3時間は明るさを少し下げ、色温度の低い光にすることが勧められています。
- ハンドブックの数字では、夜の家庭の照明は目に入る光で100〜200ルクスほど、スマホの画面は10ルクスほどです。
- 私の部屋では、天井の明かりだけで、20時より前が13ルクス、20時以降が4ルクスでした。
そのうえで、私の考えは次のとおりです。
寝る前の光を見直すなら、手元のスマホの画面だけでなく、部屋全体を照らす天井の明かりの明るさと色も見直す必要がある。
照度計を使って実際に測ってみると、私の部屋は、ハンドブックの目安よりずっと暗くなっていました。だからといって、積極的にもう少し明るくしようとは思っていません。ただ、たまに「暗くて少し不便だな」と感じることもあります。そのときは、今回の測定結果と体感とを比べて、設定し直せばいいや、と思っています。
なお、つらい不眠が続くときや、日中に強い眠気があるときは、医療機関に相談してください。
実測に用いた照度計:FieldNew デジタル照度計 ルクスメーター 200,000Lux