
「若いころは朝までぐっすり眠れたのに、最近は夜中に目が覚めてしまう…」
「寝ても疲れがとれないのは年のせいだろうか…」
50代を迎え、このような睡眠の悩みを抱えていませんか?
かつての元気な自分と比べて、睡眠の質が変わってきたと感じている方も少なくないかもしれません。
しかし、ご安心ください。それはあなた一人だけが経験していることではありません。50代男性の多くが同じような悩みを抱えています。
この記事では、加齢に伴う睡眠の変化とその原因、そして今日から実践できる快眠のヒントを丁寧にご紹介していきます。
「年のせい」と諦めるのではなく、睡眠をアップデートして、若々しくエネルギッシュな毎日を取り戻しましょう。
目次
睡眠中の50代男性は、若いころと比べて何がどう変化しているのか

まずは、50代男性の睡眠が若いころと比べて具体的にどのように変化しているのかを理解することから始めましょう。自分の体の変化を知ることで、効果的な対策を立てることができます。
睡眠時間の短縮
「昔より早く目が覚めるようになった」と感じている方も多いでしょう。50代になると、若いころと比べて必要な睡眠時間が短くなる傾向があります。これは、一般的な傾向でもあり、ある程度は自然なことです。
ただし、「睡眠時間が短くても大丈夫」というわけではありません。
必要な睡眠時間は個人差がありますが、一般的には7〜8時間が推奨されています。睡眠時間が短くなることで日中のパフォーマンスが低下したり、体調不良につながったりする場合もあるため、注意が必要です。
深い睡眠の減少
「朝起きたときに疲れがとれていない」と感じる原因の一つが、深い睡眠の減少です。
深い睡眠は、疲労回復や成長ホルモンの分泌に重要な役割を果たします。しかし、加齢とともにこの深い睡眠の割合が減り、逆に浅い睡眠の割合が増える傾向にあります。
これは、脳内の神経細胞の減少や機能低下によるものといわれており、深い睡眠が減ると、寝ても疲れがとれにくくなったり、日中の眠気が強くなったりすることがあります。
体温リズムの変化
私たちの体は、昼間に体温が高くなり、夜になると徐々に体温を下げて眠りにつくというサイクルを繰り返しています。
しかし、加齢とともにこの体温リズムに変化が起こり、夜になっても体温がスムーズに下がらなくなったり、日中の体温のピークが低くなったりすることがあります。体温がうまく下がらないと、寝つきが悪くなったり夜中に目が覚めやすくなったりします 。
睡眠リズムの前倒し
「朝早く目が覚めてしまう」という方は、睡眠リズムの前倒しが起きている可能性があります。
これは、加齢によって体内時計が少しずつ前にずれていく現象です。若いころと同じ時間帯に眠りにつこうとしても、体内時計が「もう朝だよ」と勘違いして早く目が覚めてしまうのです。
これは、加齢によって睡眠時間が短くなると自然と早起きになり、日の光を浴びる時間が早まることで早い時間に生体リズムのリセットがかり、睡眠を調整するホルモンであるメラトニンの分泌タイミングが早まることも影響しています。
内分泌系(ホルモン)の変化
50代男性の睡眠に大きく影響するのが、ホルモンバランスの変化です。特に重要なホルモンをいくつかご紹介します。
成長ホルモン分泌の減少
成長ホルモンは、体の組織の修復や疲労回復に不可欠なホルモンです。主に深い睡眠中に分泌されますが、加齢とともに分泌量が減少します。
成長ホルモンの減少は、疲労回復が遅れたり、体力の低下につながったりするため、睡眠の質を保つことがより重要になります。
メラトニン分泌の減少
メラトニンは、「睡眠ホルモン」とも呼ばれ、眠気を誘発し、睡眠と覚醒のリズムを整える重要なホルモンです。
加齢とともにメラトニンの分泌量が減少します。これが、寝つきが悪くなったり、睡眠リズムが前倒しになったりする原因の一つになることがあります。
テストステロン分泌の減少
テストステロンは、男性らしさを作るホルモンとして知られていますが、睡眠の質にも深く関わっています。
成長ホルモンにはテストステロンの分泌を促す働きがあります。加齢により成長ホルモン分泌が減りテストステロンが減少すると、睡眠の質の低下だけでなく、筋肉量の減少、性欲の低下、気分的な落ち込みなど、心身にさまざまな影響を及ぼすことがあります。
コルチゾール分泌パターンの変化
コルチゾールは「ストレスホルモン」とも呼ばれていますが、何らかのストレスが生じた際に心身のバランスを保つようストレスに対抗するホルモンでもあり、日中 の活動に必要なエネルギーを促すホルモンです。通常、朝に分泌量が多くなり、夜になると減少します。
しかし、加齢やストレスによってこの分泌パターンが乱れると、夜になってもコルチゾールの分泌量が高止まりし、交感神経が優位な状態が続いて寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりすることがあります。
その他
閉塞性睡眠時無呼吸症候群
いびきがひどい、夜中に何度も目が覚める、日中の眠気が強い、といった症状がある場合は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAHS)が疑われます。
この病気は、睡眠中に気道が狭くなって呼吸が一時的に止まってしまう病気で、高血圧や心臓病などのリスクを高めることがわかっています。
「ただのいびき」と軽視せず、疑わしい場合は医療機関を受診することをおすすめします。
睡眠に影響する、昼夜の活動

睡眠の質は、夜間の過ごし方だけでなく、日中の過ごし方にも大きく左右されます。ここでは、50代男性が特に注意したい日中の活動について見ていきましょう。
寝る直前まで脳を興奮させる仕事
日中の仕事が忙しいと、寝る直前まで仕事のことを考えてしまったり、メールや資料をチェックしたりすることもあるでしょう。
しかし、寝る直前まで脳をフル回転させると、交感神経が優位な状態が続いてしまい、心身がリラックスできません。 リラックスできない状態では、睡眠を促す副交感神経がうまく働かず、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりします。
寝る直前までスマホ
「寝る前にベッドでスマホをいじるのが日課」という方も多いかもしれません。以前はスマホやタブレットの画面から発せられるブルーライトが、睡眠に悪影響を及ぼすと言われていましたが、機器の明るさを調整して暗めの画面で見れば、それほど悪影響にはならないという説もあります。
近年では、ブルーライトの影響よりもSNSやニュースサイトなど、刺激的な情報に触れることで脳が興奮してしまうことが問題視されており、さらに眠りを遠ざけてしまうことに注意が必要です。就寝前は「モノトナス(単調な、一本調子で変化に乏しい)」な状態で過ごすことを意図しましょう。
運動
適度な運動は、睡眠の質を高めるために非常に重要です。運動をすることで、日中に体温が上がり、夜間の体温の降下幅が大きくなります。この体温の落差が大きいほど、スムーズに深い眠りに入りやすくなります。
一般的には、就寝4時間前までに運動を行うことが効果的とされています。運動によっていったん上がった深部体温を再び下げる時間を確保するためです。
過緊張、緊張の常態化
仕事や人間関係、将来への不安など、日々の生活の中でストレスを感じる場面は多々あります。
このストレスが続くと、交感神経が常に優位な状態になり、心身が緊張したままになってしまいます。 過緊張の状態が続くと、リラックスできず、睡眠の質が低下するだけでなく、高血圧や心臓病などの病気リスクを高めることにもつながります
50代男性が快眠アップデートするときに押さえておくべき予備知識

「年のせいだから仕方ない」と諦めてしまうのは、まだ早いです。ここでは、快眠アップデートを始める前に知っておいてほしい予備知識をご紹介します。
加齢だからとあきらめない
確かに、加齢によって睡眠の質は変化します。しかし、それは「快眠が不可能になる」ということではありません。
加齢による変化を理解し、それに合わせた対策をとることで、快眠を取り戻すことは十分に可能です。
大切なのは、加齢をネガティブに捉えるのではなく、自分の体の変化を受け入れ、より良い睡眠のための工夫をすることです。
環境整備の知識
快眠を実現するためには、まず眠るための環境を整えることが大切です。
空調:温度・湿度の影響
寝室の温度や湿度は、睡眠の質に大きく影響します。
- 温度: 快適な睡眠を促すには、夏は25〜26℃、冬は18〜20℃が目安とされています。
- 湿度: 湿度は、夏場50〜60%、冬場40~50%が理想です。乾燥しすぎると喉や鼻が痛くなったり、ウイルスが繁殖しやすくなったりします。逆に高すぎると、不快感を感じて寝苦しくなります。
エアコンや加湿器、除湿機などを活用して、常に快適な環境を保つように心がけましょう。
光の影響
光は、私たちの体内時計をリセットする重要な役割を担っています。
- 寝る前: 寝る前は、できるだけ強い光を避けるようにしましょう。間接照明などを活用して、暖色系の光で過ごすと、自然と眠りに入りやすくなります。
- 朝: 朝起きたらすぐに太陽の光を浴びることで、体内時計がリセットされ、夜に眠りやすくなります。
音の影響
静かな環境で眠ることが理想ですが、生活音など、どうしても避けられない音もあります。
- 無音: 無音すぎると、逆に些細な音が気になってしまうことがあります。
- ホワイトノイズ: 騒音を打ち消す効果のあるホワイトノイズを流すのも一つの手です。自然の音(雨音や波の音)なども、リラックス効果を得られるケースがあります。
空間づくり
寝室は、「眠るための場所」として認識させることが大切です。
- 部屋全体: 寝室では目の届く範囲に不要なもの(別のことに意識を向けさせるようなもの)は置かず、こまめに整頓しましょう。「寝るため」の場としてシンプルに調えるのが好ましいです。
- 「目に入ると気になってしまう」ということは往々にしてあり得ること。スマホやタブレット、読みかけの本などはなるべくベッドから遠ざけ、シンプルな空間づくりを心掛けしましょう。
リズムにあわせる
睡眠の質を向上させるには、日々のリズムを整えることが非常に重要です。
- 快眠のための最も重要なポイントの一つが、起床時間を固定することです。
平日と休日で起床時間が大きくずれると、体内時計が乱れてしまいます。これは「社会的時差ボケ」と呼ばれ、寝つきが悪くなったり、日中の眠気が強くなったりする原因になります。
休日も平日とあまり変わらない時間に起きるように心がけることで、体内時計が安定し、自然と快眠できるようになります。 - 就寝時刻の2~4時間前は睡眠禁止ゾーンとよばれ、体内時計の働きによって各精度が高まる時間があります。この時間に無理に寝ようとしても寝つきが悪くなり睡眠の質が低下する可能性もあります。
眠れないことに不安を感じるよりも、自然な眠気がおとずれるまで、リラックスして過ごすことがお勧めです。
実践編:50代男性のための快眠アップデートのポイント

日中の活動における注意点はすでに述べましたが、ここからは、今日からすぐに実践できる睡眠時の快眠アップデートのポイントを具体的にご紹介します。
睡眠時においては意識レベルが低下しているため、自らの意思で何かをコントロールすることがほぼ不可能です。ですので、少しでも良質な睡眠を得るために、からだへの刺激やストレスを減らすよう、環境を整えることに注力しましょう。
寝具の選び方
寝具は、快眠を左右する重要な要素です。
- ベッドの大きさ・高さ : ベッドは、寝返りを打つスペースを考慮して、体格に合ったものを選ぶようにしましょう。高さも重要です。ベッドが高すぎると、立ち上がるときに不安定になりやすいので、ご自身の身長や足腰の状態に合わせて選ぶことが大切です。
- マットレス : 自分の体格や寝姿勢に合ったものを選ぶことが大切です。硬すぎても柔らかすぎても体に負担がかかります。
- 枕 : 枕は、首のカーブに合ったものを選ぶことで、頸椎への負担を減らし、快眠を促します。
- 掛け布団 : 軽くて保温性、吸湿性、放湿性に優れたものがおすすめです。
寝衣の選び方
パジャマは、体を締め付けず、吸湿性と通気性の良いものを選びましょう。
- 素材 : 綿やシルク、麻などの天然素材がおすすめです。
- デザイン : ゆったりとしたサイズで、動きやすいものを選びましょう。
- 温度や湿度など、季節の変化にあわせるように寝衣を選ぶのが好ましいです。冬用、夏用、春秋用など、寝衣も衣替えの必要性を考えながら準備するのがよいです。
光をコントロールする
- 光は睡眠を左右する重要な要素です。
- 寝室の照明: 寝室の照明は、暖色系の落ち着いた光にしましょう。寝る1時間ほど前から、照明を落として過ごすと、自然と眠る準備ができます。
- 遮光カーテン: 朝までぐっすり眠りたい場合は、光を遮断する遮光カーテンがおすすめです。
- スマートカーテン:遮光カーテンを利用する場合、朝日が寝室に差し込まなくなることで朝のリセット機能がはたらかなくなるデメリットがありますが、スマートカーテンを利用して毎朝定刻にカーテンを開ければこのデメリットを解消できます。
記録アプリを活用する
直接的に刺激を低減するものではないですが、睡眠記録アプリを活用して、自分の睡眠の状態を客観的に把握してフィードバックに使うのも良い方法です。
- 睡眠時間 : 毎日の睡眠時間を記録することで、睡眠不足に気づくことができます。
- 睡眠の質 : 睡眠サイクルや、深い睡眠、浅い睡眠の割合を記録してくれるアプリもあります。
- • いびき : いびきを録音してくれるアプリもあるので、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の疑いがある場合は、医療機関での相談時に役立つかもしれません。
それでも快眠が遠い人へお勧めするマインドシフト

「いろいろ試してみたけど、なかなかうまくいかない…」
もしそう感じていても、それはあなたの取り組み方が間違っているわけではありません。もしかすると、少しだけ考え方を変えるだけで、快眠への道が開けるかもしれません。
ここでは、快眠のために役立つマインドシフトのヒントをご紹介します。
快眠条件は人それぞれ
「快眠のためには7時間寝なければならない」
「寝る前にはスマホを絶対にいじってはいけない」
このような「快眠の常識」に縛られていませんか?
快眠の条件は、人それぞれ異なります。あなたにとっての快眠の条件は、あなた自身の体と心に聞くしかありません。
大切なのは、「こうしなければならない」というルールに縛られるのではなく、「自分にとって何が心地よいか」を大切にすることです。
ルールに縛られないこと、試してみるスタンスで
「完璧にやらないと意味がない」と考える必要はありません。
まずは、「今日はこれを試してみよう」という実験的なスタンスで取り組んでみましょう。
- 「今日は寝る1時間前からスマホを触らないようにしてみよう」
- 「夜はスマホの明るさを変えて(暗くして)使ってみよう」
- 「今日は寝る前にストレッチをしてみよう」
- 「寝る前に深呼吸だけでもしてみよう」
こんなふうに、ちょっと意識を向けて実行してみるのが大切です。完璧を目指すのではなく、できることから少しずつ試していくことが快眠へと導いてくれます。
寝る場所だと覚えさせる
「ベッドは、眠るための場所」だと、あなたの脳に覚えさせましょう。
- 寝る直前のスマホや読書: ベッドの上でスマホをいじったり、読書をしたりすると、脳は「ここは活動する場所だ」と認識してしまいます。ちょっとした ” しつけ ” のように、「ベッドは、眠るための場所」だと、あなたの脳に覚えさせましょう。
- 仕事や悩み事: ベッドの上で仕事や悩み事を考えるのも避けたいところです。思考が巡りはじめたら、それに気づくことが、はじめの一歩です。それに気づいたら、ゆったりと呼吸しましょう
- 眠れない状態が20~30分ほど続いたら、一度ベッドから離れてからだをほぐしたり揺らしたりして自分のすべてをゆるめてみてください。
ルーティンを試してみる
「この行動をしたら眠る時間だ」と脳に認識させる入眠ルーティンを作ることも効果的です。
- 温かい飲み物を飲む
- 好きな音楽を聴く
- アロマを焚く
- 軽いストレッチをする
など、自分にとって心地よい行動を寝る前の習慣にすることで、自然と眠りに入りやすくなります。
自分が落ち着けるちょっとした行動を日々の生活から見つけてみるのも良いかもしれません。自分にとって何が「快」と感じることなのか、軽い気持ちで探してみるのも楽しいですよ。
この記事のまとめ
50代男性の睡眠に関するお悩みに、この記事がお役に立てば幸いです。最後に、これまでの内容を簡単にまとめます。
- 加齢による睡眠の変化を理解する: 50代になると、深い睡眠の減少やホルモンバランスの変化など、睡眠の質が低下する原因があります。まずは、ご自身の体の変化を正しく知ることが快眠への第一歩です。
- 日中の過ごし方を見直す: 寝る直前まで仕事やスマホに集中したり、運動不足が続いたりすると、睡眠の質は低下します。適度な運動や、寝る前のリラックスタイムを意識して取り入れましょう。
- 睡眠環境を整える: 快適な温度・湿度、光、音、そしてご自身の体に合った寝具を準備することで、眠りやすい環境を作ることができます。
- リズムを調える: 休日も平日と同じくらいの時間に起きることで、体内時計が調い、自然な眠気が訪れやすくなります。
- マインドシフト: 「快眠の常識」に縛られず、ご自身にとって心地よい方法を実験的に試してみることが大切です。
“今の自分に合った眠り方”を再構築することが、快眠アップデートのコツです。
快眠のヒントは、「生活リズム・習慣」とそれを調える「道具・環境」、その両方にあります。
「歳だから仕方ない」と眠れない夜を我慢するのではなく“今の自分に合った眠り”を、自分の手でつくっていく。
そんな視点をもつことが、50代の快眠には何よりも大切です。 自分に合った方法を見つけて、心身ともに健やかな毎日を過ごしましょう